かごしまんまだより
平成26年9月12日(金) かごしまんまだより【F1種とは~支配されつつある種と農業~】
この夏は全国的に台風や雨が多く、日照時間も例年より圧倒的に多くてワーストとなる地域も出たとのことでした。鹿児島ではキュウリやナスが例年より不作で、こちらでもスーパーではびっくりするほど高いです。昼間の日差しは夏そのものですが、朝晩の気温はぐっと下がって秋の気配も感じられるようになりました。野菜セットに種類が少ない厳しい時期が続きましたがもう少しの辛抱です。
【支配されつつある種と農業】
F1という言葉を知っていますか?車の事ではありません。種の話です。
植物の多くは種をつくり、その種を取っておいて次の年に種をまくと芽が出ます。
小学校で朝顔やヒマワリを育てて種を採取した記憶がありますよね。
野菜もそうです。
昔の農家は野菜を育てながら畑からその種を採り、来期に備えました。
でも今の農家のほとんどは自分の畑の野菜から種を採らず、種苗会社から毎回購入しています。
どうしてでしょう?
それは、種苗会社から購入する種子の野菜のほうが、形や大きさが均一で病気や農薬に強くて大量生産がしやすいからです。
しかし、種苗会社の種子のほとんどはF1です。
F1とは、違う品種同士を交配してつくった新品種の1代目のことです。
人為的に交配して新品種をつくるとメンデルの遺伝の法則により1代目(F1)では優性形質が現れますが、次の世代ではF1で現れなかった色々な劣性形質が現れるので、安定した野菜ができないので農家はこのF1の種は採れません。
昭和30年代までは農家は自分の畑の野菜から種を採って次の年にそれをまいて野菜を栽培していました。
しかしこのF1種が出てからは農家は種をつくらず購入するようになりました。
日本の2大種苗会社であるT社とS社もF1種子です。
私達がホームセンターなどで目にする種子のほとんどはF1種子です(F1種・交配種などと記載されています)。
種苗会社がF1種子をつくるにはもちろんその野菜を育てます。
でも自然に自家受粉されてはF1品種はもちろんできません。
そこで除雄という雄しべを取り除く作業を行います。
日本の農業を支える大手の種苗会社が、雄しべを一つ一つ手で取り除く作業をすることはもちろんしません。
そこで雄性不稔のF1種を作り出すのです。
雄性不稔とは人間でいうところの男性不妊症や無精子症といったところで、雄しべに異常がある種の事です。
そうしてミツバチたちが受粉しても自然に受精できないような品種になるのです。
そういう花粉を食べるミツバチには異常が起きないのでしょうか。
昨今のミツバチの大量失踪と関係はないのでしょうか。
また、F1種の作物は多くの肥料を必要としたり特有の農薬を必要としたりするものがありますが、うがった見方をすればそれは全て種苗会社の品種改良次第ということになります。
これは遺伝子組み換え作物と同じように将来の農業構造が非常に懸念されることだと思います。
そして世界の種苗会社の大半の株は世界最大手の遺伝子組み換え企業が買収しているといわれています。
F1種子はたしかに農家の救世主です。
しかしそれによって農家は種子やその種子に適した農薬や肥料をずっと買い続けなくてはならない構造になっていくのではないでしょうか。。。。
在来種(F1ではない種。在来種ともいう)の野菜を栽培する本来の農業であれば、化学肥料や農薬を使わない自然栽培が可能だといいます。
もちろんそういう野菜は虫の穴だらけであったり大きさや形や味がバラバラで個性豊かだったりで現在の市場では値が付かないかもしれません。
見た目と価格で判断されるスーパーでは売れ残るでしょう。
しかしそういう野菜こそ本当に安全で美味しい野菜であると思うのです。
手に取った時、食べた時に愛しいと思うのです。
種苗会社や農家が悪いという問題ではありません。
我々消費者が見た目がよくて安い野菜を1年中求めた結果です。
今のかごしまんまではどうすることもできないのが現実ではございますが、消費者の皆さまに知っておいてもらいたい農業の現状でした。
ここではF1についてほんの少ししかご紹介できていませんが、ご興味のある方はぜひインターネットで「F1 種」と検索してみたり、野口種苗さんの本を読んでみたりして下さい。
- 2015.02.04
- 15:24
- かごしまんまだより